ジンギスカン魂

Kakeru2004-06-28


今日は実家から送ってもらったジンギスカンアイヌネギを食べた。具は他にタマネギ、ピーマン、もやし、それに饂飩。

北海道人のソウルフードといえば、それはジンギスカンだろう。
味噌ラーメン? 北海道のラーメンは元々魚介系の醤油ラーメンが多数派だった(味噌ラーメンはずいぶん時代が下ってから札幌で「発明」されたもの)
石狩鍋? これは結構そうかもしれない。でも、道南では三平汁だろうし、々石狩鍋の中でもレシピの差は結構大きい。
チャンチャン焼きに至っては、北海道出身の人でも食べたことのない人が多いと思いだろう。ハマ*1の一部で食べられていた漁師料理そのものなんだろうし、札幌の料理屋で出てくるようになったのはここ十数年じゃないのかな。

ジンギスカン鍋は北海道の家庭ならどこにでもあるだろう。大阪の家庭に必ずたこ焼きの鉄板があると聞いたときには??? と思ったけれど、同じようなものかもしれない。
写真の鍋はハードオフで買ってきた南部鉄未使用新品500円、安い! 
盛り上がっている中央部で肉を焼くと、模様状の溝から肉汁が縁の部分に導かれ、そこで野菜などを肉汁で煮る構造になっている。
詳しい構造などについては下の写真をクリックしたリンクでも紹介されている。

特製ジンギスカン鍋


さて、とにかく北海道ではジンギスカンを食べる。明けても暮れても食べる。
運動会でジンギスカン。炊事遠足でジンギスカン。海水浴でジンギスカン。キャンプでジンギスカン。河原でジンギスカン。山でもジンギスカン……とにかく一年中どこでもジンギスカンなのが北海道だ(鍋を火にかけて材料をのせるだけのジンギスカンだからこその活躍ぶりで、いわば巨大味噌汁の石狩鍋だとなかなかこうはいかない)。

「日本全国酒飲み音頭」というコミックソングは、♪一月は正月で酒が飲める、二月は豆まき、三月は雛祭り……と延々続くのだけれど、北海道はその「酒が飲める」を「ジンギスカンを食べる」に置き換えられるくらい、とにかくジンギスカンでマトンでラムなカントリーなのだ。


ところが……同じ北海道でもジンギスカン界を二分する勢力争いがある。

「味付き派」「タレ付け派」この二大勢力の争いは……というか、白地図をきっちり色分けできるくらいにエリアが線引きできそうなくらいなので、なかなか争いにすらなりそうもない。両者の完全な雑居地は、札幌くらいじゃないだろうか。
僕は「味付き派」。あらかじめタレに漬け込んである肉を焼くと、肉汁とタレが周りの野菜にしみてうまさ倍増! ご飯茶碗の米粒を、タレで茶色く染めながら鍋にかじりつくのがジンギスカンだと思って育った。

なので「タレ付け派」にはあまりいい印象を持っていなかった。
例えば札幌ビール園で出てくる肉は、冷凍のニュージーランド物。それもマトンの成形物で、お世辞にもおいしいと言えるような肉じゃない。
すすきので、その成形肉で「ラムしゃぶ」を食べたことがあったけれど……はっきりいって臭いだけでちょっとツライ料理だった(成形肉……カットした肉を巨大なハムのような丸い棒状に成形して冷凍した肉。肉屋ではそれを薄く輪切りにして売っている。北海道では、その丸い肉を「羊の輪切り」と思いこんでいる子供が結構いる)


北海道には羊がたくさんいるようなイメージを持っている人も多いと思うけれど、実は牧羊の商業的な展開は、とうの昔に挫折してしまっていて、観光用の牧場はあっても、大規模畜産として行われているところは一つもない(そんないきさつ自体も、中学生の時に村上春樹の「羊をめぐる冒険」を読むまで知らなかった)。
なので、昔はおいしい生の羊肉というものが、北海道ではまず食べられなかったのだ。

でも、近年はちょっと状況が変わってきた。
冷凍というかチルド輸送の発達や、海外から飛行機がビュンビュン飛んでくるようになったことで、なかなか良い肉が北海道にも入ってくるようになったからだ(そして幹線道路が整備され、物流が整ってきた)

15年くらい前、「タレ付け派」をはじめておいしいと思ったのが、すすきののちょっとはずれにある「ジンギスカン Ram」
七輪にのせる鍋は「穴あき」(これもここで初めて見た)
ちょっとキラー・カーンに似てて(というか平口広美か?)、ときどきハンドパワー系のマジックを披露してくれてたオヤジさんは元気かな。

今ならおいしい肉をおいしいタレで食べさせてくれる店はもっともっとあると思う。

でも、三つ子の魂……というか、僕にとってのジンギスカンはやっぱり「味付き」だ。

mixiでもジンギスカン系のコミュニティに参加しようと思ったら、トピックに「タレ」系の話題が集中していたので、どうしても入る気分になれなかった。
タレ系分派を作ろうかとも思うのだけれど……同趣旨のコミュニティが先行している限り難しいかなあ、とも思う。「味付き派の同志発見!」なんて喜んでくれる人がいたらいいんだけどなあ……いないかなあ。

羊をめぐる冒険

羊をめぐる冒険

*1:北海道で「ハマ」というとそれは横浜ではなく、北海道沿岸部で漁港のあるようなところを指すことが多い。cf. ハマ言葉(漁師言葉)