「リング」★3/5

Kakeru2005-03-08

原作のイメージから浮かべた高山像は、異端エリートというキャラ立てからの連想で宮台真司とか宮崎哲弥といったあたりだった。
妄想はさておき、無頼派の高山を真田広之というのは明らかなミスキャスト。


※以下は原作と映画のネタバレを含みます


原作の強姦マニア(を標榜している)という設定は映画的に扱いにくかったのかもしれないにしても、元砲丸投げ選手の高山が真田広之というのは、どうもピンとこない。あれだけ原作が売れたということは、それだけの読者がいるわけで、それだけのボリュームのイメージを強いて壊す理由がわからない。

それよりも何よりもミスキャスト、というか製作者の考えがまるでわからないのが、浅川(松嶋菜々子)のキャスティング。浅川を原作の男性から女性にしたことに対するネガティブな反応が多かったように、この失策は単純に性別の変更という問題にはとどまらなかったはずだ。
原作では、浅川と高山の関係性に、ある種ホモセクシャル的ですらある緊張感があり、それが『戦場のメリークリスマス』のようなエロスを、インヴィジブルな要素として内包していたと思わせる部分があった。
しかし本作では、両者をキーとなる子供の両親にしてしまった。この時点で本作の緊張感は一歩後退する。それどころか、高山と高野(中谷美紀)の関係の純粋性や精神性もスポイルされてしまう他はない。

そんなエロス的要素こそ僕の妄想だったにしても、少なくとも学究的興味があくまで先行する高山と、わが子かわいさで義理の両親を巻き込んだり、妻子の死から廃人同様になってしまう(その後死んでしまう)浅川とのコントラストがもたらすあやうさ、緊張感はたしかにあった。
ところが本作では、2人がかりでわが子に対して必死になってしまうのだから、原作の高度に組み立てられたロジックからくる恐怖は、単なる湿っぽい愁嘆場へと急降下する。
そして、井戸の中で頭骨を抱きしめる浅川。原作を大幅に塗り替えたのは「母性云々を強調しようとする月並みな演出意図」から、という薄っぺらさが一気に表出してしまい、鈴木光司的世界は一気に瓦解する。


呪いのビデオ+貞子の目力は充分★5に値する。その恐怖に免じて他の減点を最小限にした結果、ギリギリで★3。(CinemaScapeリング」拙コメントより)

それにしても……ブラウン管から出てくる貞子の怖さは、テレビで鑑賞することで恐怖倍増という感じだったのだけれど、もしこの目力(写真)を、映画館のスクリーンで見ていたら、しばらくは……うなされてしまったかなぁ。