「クリムゾン・タイド」★3/5

Kakeru2005-01-19


潜水艦の閉息感と息苦しさを、定石をキッチリと押さえて縦横に駆使。
それでいて自身の絵作りのツボも外さないのだから、トニー・スコットという人はなかなかにウマイ。



正義も悪もなく、そこには命令と軍人が存在するだけ。このシンプルさが、プリミティブな緊張感で観客を支配する。

また、戦争映画においては明確な「敵」を存在させない方が、ドラマとしての骨格が伝わりやすい、ということも証明してくれている。「ロシアの反乱軍」というもの自体が曖昧模糊としている上に、見せる姿は潜水艦のシルエットどまりだ。

終戦争の危機という生々しいけれど漠然としているものには軸足を置かず、焦点を男と男の衝突、というベクトルに持っていったことで、息づかいすら伝わってくるような緊張感を前面に押し出した佳作。 そこには一つの命令を取りまく軍人しかいない。(CinemaScapeクリムゾン・タイド」拙コメントより)


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「戦争に相対的な善悪はあっても、兵士には善悪はない」

戦争における兵士の存在、立場をここまで明確に描いている作品はそうそうない。これはそういう意味からも大変な佳作だと思う。

善い戦争、悪い戦争というのはもちろんあるだろう(例えそれが相対的なものであったとしても)。
でも、悪い兵士というのは存在しない。存在し得ない(悪い「人間」はもちろん存在する)

戦争反対だとか、平和だとかを声高に叫んでいる人は、まずそのへんから考えてほしい。
そういう人たちは、往々にして「戦闘」に反対しているだけで、その「戦争」がどこからきたのか、誰のための戦争なのかという本質について見過ごしていることが多すぎる。