「リトル・ダンサー」★5/5

Kakeru2005-01-06


ストの風吹きすさぶ炭坑、ごく狭いコミュニティにすら存在する階級社会。そこにまとわりつき、のしかかる閉息感を、ダンスという自己表現で打ち破っていく少年。家族の愛や思いやりに励まされながらも、自己実現のために1人で歩いていかねばならない孤独。



週末の渋谷の映画館で、ピアノの発表会にでも来たような「他所行き」を着た子供たちと一緒に行列する。入れ替え上映になるまで膨れ上がった観客の大半は、バレエを習っている子供たちだったかも。

観賞後、「誰でもレッスンが受けられる社会でよかったね」と声をかけたくなるような気分になる。主人公の名前は「ウィリアム」であって「ビリー」ではない……という原題に隠されたちょっとした仕掛けは、彼女たちには届くだろうか。
もっとも、そのかわりに(?)ロイヤルバレエスクールのように生徒を公募するバレエ学校も、日本には皆無なのだが。

残念だったのは、主人公にタップダンス経験者を使ったこと。クラシックバレエにこだわって見ていると、どうしてもひっかかってしまう。フレッド・アステアのような分かりやすいキーワードを、強く必要とするような作品だったとは思えなかった。
CinemaScapeリトル・ダンサー」拙コメントより)

リトル・ダンサー BILLY ELLIOT [DVD]

イギリス映画的には「また炭坑?」と食傷気味な人も多いようだけれど、北海道の旧産炭地で生まれた僕にとっては、リアリティを超えて現実がよみがえり、のしかかってくるばかりだった。
あの虚無や虚脱といった感じは、画面からだけは実感体感してはもらえないだろう。