ラスベガスがやってきた

Kakeru2003-12-24


クリスマス・イブはこれでもずいぶん静かになった。バブル期のようなホテル難民、なんてこともなくなってきているらしい。
ホイチョイプロダクションのマンガで、未来のクリスマスは「理由はわからないけれどホテルでセックスすることになっている日」になっている、なんてネタがあったのも今はもう昔の話、といったところ。

ところが……シティホテルが静かになる一方で、全国の住宅地がピカピカビカビカと、ひどくにぎやかになってきている。
ホームイルミネーション、なんて言葉、っていうか概念がもうできているのにも驚いたのだけれど、とにかく自分の家をカジノや水上レストラン、エレクトリカルパレードみたいにしてしまうアレ。
横浜の港北のように、新興住宅地でよく見られるような気がするけれど、古くから住宅地だった我が家の近所にもチラチラと見かけるようになった。
 
北海道では、20年くらい前からちょっとしたホームイルミネーションを見かけるようになった。
札幌のホワイトイルミネーション(写真)に影響されたこともあるし、冬の白と灰色しかない景色の中の暖かな景観は、冬の日没が早い北海道では防犯にも役立ったりもすることから「一軒に一本イルミネーションの木を」みたいなことを提唱していた人もいたような気がする。
でも、雪深い北海道のこと、屋根やベランダを満艦飾にするのは不可能だった……というか、家をまるごと光の塊にするような価値観そのものがなかったと思う。

さて、ここのところのホームイルミネーションブーム。ずいぶんとぶっそうになった最近だし、たしかに防犯効果はあるのかもしれない。でも、何か肝心なことが抜け落ちているような気がする。

今年の夏、東京は原発の停止で電気不足不安があった。
実際は冷夏のおかげで間一髪セーフだったわけだけれど、東京電力の節電キャンペーンの熱心さはすごかった。「電気予報」なんてものが必要になるなんて、想像したこともなかった。
もしホームイルミネーションの習慣が、夏にピークになるものだったとしたら、電力会社は、イルミネーター(なんだかターミネーターみたいだ)の人たちは、どうしただろう。
でんこちゃん東京電力のCMキャラクター)が「♪ジャン! 電気を大切にね」と出てこないのは、冬で供給に余裕があるから商売したがってるからなのか? とか勘ぐってしまう。

それこそ大手小町あたりだと、イルミネーションに否定的な意見をアップした人に「人間の活動はそもそも無駄なもの。全ての消費活動を否定するのか!」みたいな強い口調の反論があびせられたりもする。
たしかに、ルミナリエミレナリオ省エネルギーの観点から批判するのは環境原理主義のようにも見えるし、ライトアップされた立ち木が庭にあるような家は、その家庭自体と、その地域社会の余裕というか、豊かさだと思う。

でも、住宅地に見物人がどんどん押し寄せたり、駐車場が用意されたりしているようになってしまえば、何かが過剰だ、ってことなんじゃないか?
どこまでが豊かさで、どこからが飽食なのか、そこに線を引くことは難しい。でも、少なくともご近所界隈がラスベガスのホテル街のようになってしまえば、なんとも落ち着かなくなってしまうと思う。もし隣にそういう家があったら、黙って遮光カーテンを買ってくるだけでは済まないような気がする。

とりあえず、近所にそういう家がないことでホッとしている。

ドリカムの「LAT.43°N」にも登場する札幌のホワイトイルミネーション。現地では“デートで見に行くと別れる”なんて言われ方もされてます。

ホテル難民というと、隅田川の花火大会の日、湯島から鴬谷にかけてのラブホが完璧に満室で、ごく控えめに言って「大変困った」ことがあった。
もっと若い頃だったら大塚とか巣鴨どころか池袋まで足を伸ばしちゃっただろうなあ……彼女の最寄り駅の日暮里まで送っていってデート終了、だったけど。