テレビ屋

Kakeru2004-05-12


月曜日、マレー屋さん(「馬来風光美食」)の前を通りかかった。月曜定休のはずなのに、看板の電気がついている。
でも、やってるならご飯食べて行こうかな、と階段を下りていく。

ドアには「営業中」のプレート。でも……決して広くない店の中には、所狭しとテレビクルーが立ち並んでいる。どうも何かの番組の収録のようだ。
カメラが回っているようなので、あわてて静かにする。
しばらく日本に滞在中の、店主のンさんのお母さんが、ドアの外で待っている僕たちに気づいて手を振ってくれた。じゃあ、営業中のプレート出たままだし、すぐ終わるのかな、と思ってちょっと待つことにした。

オッケーが出てカメラが止められたところで、ドアをちょっと開けてンさんに声をかける。
「!  ゴメンナサイ、今日休ミダカラ、コレ、取材……」
「あ、そうなんだ。看板の電気ついてたからのぞいてみたら、これ(プレート)“営業中”になってたからさ」
「ゴメンネー」
なんて話をしてたら、ちょっと偉そうなスタッフが、あんまり偉くなさそうなスタッフに「電気消し忘れるなよ」みたいなことを言っている断片が聞こえる。
そして……別のスタッフの手で、僕たちの鼻先で“営業中”のプレートが裏返された。

無言で、しかも鼻先でプレートをひっくり返すのは、どう考えても無礼だろう。
ンさんが恐縮すればするほど、彼等がおしなべて無言で、来店客を邪魔者扱いしていることに腹が立ってしかたがなかった。第一、電気を消し忘れていたのは彼等の手落ちじゃないか。
黙って追い払うようなことをしなくたっていいだろうに、フレームの中とそれを見ている視聴者のことしか考えていないテレビ屋には、現場に紛れ込んだシロートなんてものは蝿蚊の類かそれ以下なんだろう。

ずいぶんと小さな、それにテレビ局の名前も制作会社の名前もついていないカメラを回していたから、多分CATVとかそういったところのクルーだったのだろうけれど、テレビ屋は大体こんなもんだったよな、なんてことを思い出す。
テレビ屋とはそう遠くない畑で仕事をしているけれど、カメラと音声のクルーの傍若無人さはよく目の当たりにする。
現場で三脚を足の上に設置されたり、不用意に振り回されたマイクブームにラリアットをくらったこともあるけれど、謝ってもらったことは一度もない(怒声を浴びたことはあるけれど)。

そんな嫌な思いの積み重ねしかないものだから、酒のあるところでテレビ屋と居合わせたら、まず平和な結末は迎えられない。

……でも、唯一の例外テレビマン氏もいたりするんだけど、それって極めてレアなことなんだろうなぁ。
(※後日談 →「マレー屋さん全国ネットに!」)

マレー屋さん(「馬来風光美食」)の話を書くときはいつも地図でお茶を濁していていかん……とか思いつつも、いつもフラッと出かけてしまうので、カメラが無くて写真を撮れずにいる。
青梅街道にぽろん、と出ているクリップライトつきの所在なげな看板とか、イチオシメニューの「ナシルマ」の写真、今度こそ撮ってこよう。